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セラミック時計といえばシャネル「J12」! その魅力と進化に迫る

数多の時計のなかでも「名作」と呼ばれるモデルを、時計のプロが語ります。第8回目は、「シャネル」のJ12。セラミックを使った腕時計の先駆けとして登場し、20年以上に渡って進化し続けるアイコンなのです。

星の数ほどある腕時計のなかで、「名作」と呼ばれるモデルは何が違うのか? 時計のプロがその魅力を語ります。あなたの「時」を豊かにする、理想の一本との出合いを、ぜひ──。

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シャネルの“不変のスタイル”を体現するアイコン

いまや高級時計の世界ではスタンダードな素材となったセラミック。その先駆けとなったモデルのひとつが、「シャネル」のJ12でした。

ブランドのコードカラーであるブラック&ホワイトの世界感を、ハイテク セラミックで表現したJ12。今回は、J12がどのようにしてアイコンへと進化したのかを考えます。


(1)セラミックモデルの先駆となったブラック&ホワイト

「シャネル」初の男性用腕時計として、2000年9月に発売されたJ12。当初はブラック セラミックのみの展開でしたが、03年にはホワイト セラミックが追加され、11年にはクロマティック(=無彩色)カラーのチタン セラミックが誕生しています。

そのデザインを手掛けたのは、18歳でシャネルに入社し、40年もの長きにわたってアーティスティックディレクターの重責を担った故ジャック・エリュ。「シャネル No.5」のボトルストッパーに範を取ったレディースウォッチプルミエール(1987年)のデザインも手掛けた人物でした。

彼のチームが新しい男性用腕時計の開発に着手したのは1993年頃。そのコード名は「エクス・ニヒロ」(ゼロから生ずるの意味)。これが後のJ12となるのですが、驚くべきことにこのモデルは、決して斬新なデザインではなく、むしろクラシックとも呼べるようなディテールで構成されていました。

ただし、ひとつひとつのディテールが重なり合って醸し出すバランス感覚は完璧。ハイテク セラミックという素材を除けば、J12は生まれながらにして、完璧な古典だったのです。


(2)何も変えずにすべてを変えた現行モデル

そんなJ12が大きく生まれ変わるのは2019年のこと。誕生から19年の歳月を経て、古典にメスを入れたのです。その頃には「シャネル」はすでに、G&Fシャトランという類まれな外装工房を傘下に有し、キャリバー1.に始まる自社製ムーブメントの製造も手掛けるようになっていました。

リニューアルのコンセプトは「何も変えずに、すべてを変えること」。キーとなったのは、「シャネル」も資本参加しているケニッシによるオリジナルムーブメントの導入でした。「チューダー」や「ブライトリング」といった時計業界の本格派たちと基本設計を共有する新しい心臓は、従来機よりもさらに繊細で、何よりエクスクルーシブな存在だったのです。

それに伴い、スティール製のソリッドバックだったケース裏まで高耐性ハイテク セラミック製となり、さらにシースルー化されています。ディテールは煮詰めたにせよ、腕にした感覚はまさにJ12そのまま。

古典ゆえに何も変えられないという制約を逆手にとって、すべてをゼロから作り直した新生J12は、新たなアイコンとして生まれ変わったのです。


(3)ポップな進化&真面目な進化

2019年にフルリニューアルを果たし、“ニューアイコン=新たな古典”となった新生J12は、その翌年から多方面へのアプローチを見せるようになります。シャネル独特の、洒脱な遊び心が存分に発揮されてゆくのです。

20年に登場したJ12 パラドックスはその象徴的なモデルでしょう。ホワイトとブラックのセラミックケースを、物理的に切断して再接着したバイカラーケースは、その製法とともに見る者に驚きを与えました。

製法自体はやや乱暴にも思えますが、その寸法精度は長年ハイテク セラミックの焼成技術を磨いてきた「シャネル」ならでは。最も防水性に負荷のかかるバックケースのサファイアガラス外周には、新たにスティール製のリングが加えられるなど、技術的なバックアップも十分なものでした。


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